ここ最近ゲームばかりやっていて、他のことに脳が行っていませんでした。
そんな間に最終巻（一応）が出てしまった、「或るアホウの一生」を今回は推したいと思います。推せば何年か後でももしかしたら続きがどうにかなるかもしれないと祈って。必死でオススメするので、全員買って下さい。４冊だからすぐ買える。お金持ちはもう私の文章とかいいから今すぐ買って下さい。
買ってほしくて焦っていつもより早くリンクを貼りましたが、とりあえず内容説明とオススメ理由も書きますね。
- まんが
（評価いいよ！ というアピールのためにAmazonの検索結果画像を貼る。）
では基本情報から。「或るアホウの一生」トウテムポール著、全４巻完結。小学館、裏サンデー・マンガワン連載作品です。
ご注意いただきたいのが、１～３巻は紙でも出ていますが、４巻は電子版しか出ていません。紙で全巻揃えることは現時点（2019年1月時点）では無理ですので、お気をつけて。
打ち切りです。最初にこれを言わないとフェアではないかなと思うので言いますと、４巻が最終巻ですが「第一部完」になっています。４巻までで十分ある程度まとまっているというか、なるほど見せたいものを限られた範囲内で全力で出し切ってくださった、という内容ではあるので、終わってないし２部あるかわかんないけどオススメが可能（私内基準。結構きびしいよ！ ほんとだよ！）、というなかなか稀有な作品です。
作者先生納得の上での終了であり、読者が叫べばいいというものではないようなのでアレなんですけども、でも続きが読みたい人はたくさんいると思う……５年後とかに再開しないかな……という気持ちを込めて一応ここでひっそりですが叫ぶよ。（小学館できちんと将棋監修がつき、信頼できる担当さんと作品を作っていたとのこと、それが変わってしまうと確かに難しそう）
では内容について。将棋マンガです。男子高校生棋士（１話時点でプロ未満）とその周囲の棋士たちの、身や心を削っての様々な将棋人生を描くおはなし。……とだけ言うと「３月のライオン」じゃんと思われますね。それは「機龍警察とパトレイバーが似ている」といわれたときと同じです。「ちっげーよ。要素が一部かぶってるだけだろ『警察』が『人型兵機に乗る』だけだろ」と返すやつです。なんかフラッシュバックで違うほとばしりが出てしまいましたが、つまりは舞台がかぶってるだけで内容は全然違います。スラムダンクと黒子のバスケが似てないのと同じです。（逆に言えばスラムダンクと黒子のバスケが同じだと思う人には同じかもしれません）
主人公は、ちょっと変わってるくらいにまっすぐな子です。そしてナチュラルに奇行な子です。ヴィジュアル系白塗りメイクで地味にまっすぐ生きたりします。……見た目はギャグ漫画になるんですけど、本人の中でしっかり辻褄が合ってるのがこちらに伝わるので、むしろ切なさすらおぼえる感じの隈取白粉です。
周囲をとりまく人々も、基本的にはわりといい人たちです……が。生々しいです。感情移入できすぎてしまう。将棋の打ち方が何から来ているのか、何を考えて打っているのか。勝敗に対する恐怖と執着と放心。どろどろしていて人間味があって、でもマンガ的でシニカルで、読んでると斜め後ろから小さいナイフで刺されるような感じです。キャラクターに対して、好き、嫌い、気持ち悪い、怖い、かっこいい、が全部同時に湧く感じです。
挫折にトラウマがある人には、こういう負けたら人生が変わるようなつらい世界のマンガを読むのは精神衛生上よくないと思うけど……でもあえて読んでほしい。挫折はどこからどこまでが挫折なのか。強いとはどういうことなのか。それを理解することが正しいことなのか。自分にとっていいことなのか。登場人物たちそれぞれの尺度は、読む側の励みになると思います。特に最後の４巻、主人公の師匠の人生のお話がね。すごかったので。
打ち切りが決まった後に、主人公はさておいて最後にこの師匠の話をぶっこもうとお決めになったのはほんとにすごいし、ありがたいと思います。私は過去様々な「物語」を読んできて、この師匠と同じような境遇で同じように過ごした人の物語も多く見てきて、パターンはわかっていたのに。様々な角度から殴られました。漫画の演出力と作者のこだわった部分に圧がありすぎて、めちゃめちゃ強かったです。攻撃は見えているのにかわせない。殴られる。
そしてすごいポイントとしてもうひとつ。「あれ、いい人間しかいないな」と２回読んでからようやく気付いたけど、「人のよくないところ」がすごく描かれているのに「振り返るといい人間しかいない」という感想になるんだよね。すごかった。ナマナマしい人間は醜いけどでもいい人、というね。読後感は悪くないんだけど、まったくもって爽やかじゃないところが。いいですよねそういうのね。つらいけどつらすぎないちょっとだけつらい適度な感じでね。
あとネタバレのようでネタバレまでいかないけどまぁ一応ちょっとしたネタバレになるので白反転するけど、２回め読んで「オウムが……！！！！」ってなるので２回読んでほしい。
まだまだこの先、どうなるんだよこの子……この人どんな人なんだよほんとは……みたいな状態なので、大人の事情さえなければ本当に２部が読みたいです。単行本がぜんぜん売れなかったというけれど、なんで売れなかったんだろうな……ほんとわかんないなこれ……。
作者はBL漫画で活動をしていて、そちらも面白いし作品に読者が殴られるやつだしめっちゃ売れてる（そっちはだいじょうぶ……打ち切られない……）んですけど、このアホウの方は全然BL漫画色が出てないのがすごいな、とも地味に思っています。男性が男性に執着している部分はがっつりあるんだけど、BL漫画の方の熱の伝わり方とは全然違う。「描き方そんなに違うのかな……いや違うか、そうだな……んー……」みたいな、納得いくようないかないような微妙な感じです。その違いをぜひ両方とも読んで味わってほしいです個人的には。そんで誰か言語化してくれ。されてるかなもうどこかで。あとでぐぐろう。（今ぐぐって当たるともうこの記事ブログに上げたくなくなるかもしれないので。枯れ木も山の賑わい、上げるだけは上げたい）